遡る事数年前、こんな依頼を受けました。
『毎日10時間使っても耳が痛く成らないマスクは作れないですか？』
と。
依頼の主はトリマーさん＝ペットの美容師さん。
我々の本職はペット用品の企画や試作だった事も有り、取引き頂いていたそのトリマーさんからそんな依頼を受けたのです。
ペットの毛が舞散る仕事環境において、トリマーの方に取ってマスクは欠かせません。
そんなトリマーさん。
普段は一般的な使い捨てマスクを使用されてたのですが、毎日長時間使うと耳がとても痛くなってるのだとか。
赤くかぶれたり、場合によっては擦りむけのような状態に成る事も。
マスクを使わなければ直ぐに改善するのですが、職業柄マスクを着けない訳には行きません。
そこで考えたのが、頭の後ろで留めるタイプのマスクです。
耳には掛けないので、当然ですが耳は痛くなりません。
それ自体は特に目新しい物では有りませんが、布マスクで作ると成ると幾つかの問題が上がりました。
最大の問題は、頭の後ろで留める為に長いゴム紐を着けると、保管や洗濯の際に絡まったりと、使い勝手が非常に悪いと言う点です。
耳に掛ける一般的なマスクは精々直径8ｃｍ程度の輪ですが、頭をぐるっと回すと成ると、その何倍もの長さに成ってしまいます。
使い捨てるなら問題には成らないのですが、洗濯したり保管したりを考えると、正直かなり煩わしいのです。
そこでゴム紐＝ストラップを着脱式にする事に仕様変更しました。
これにより、洗濯や保管時の際はゴム紐無しのマスク単体と成るので、ゴムが絡んだりと煩わしい事ともさよならです。
加えて、ゴム紐の破損によりマスク自体が使用できなく成る事も有りません。
何度かの仕様変更を経て、現在は耐久性を考えて鉄製のフックで留めています。
これによりプラスチックフックのような破損は起こりません。
医療用マスクや作業用防塵マスクとは異なり、この耳の痛くならないマスクは、ストラップを後頭部でクロスさせています。
かなり強いテンションで使う医療用のマスクなら問題には成らないのですが、2本のゴムを並行に頭に回したら、少しテンションを緩めると直ぐにズレてしまいます。
でも普段からあまり強いテンションで留めるのは少々苦しいでしょう。
従って、このマスクはかなり緩めのテンションでもずれないように、ストラップをクロスさせました。
これにより、最低限のテンションでもマスクがズレる事は最小限に防げます。
もうギチギチに締める必要は有りません。
ストラップの調整は透明の角カンで行います。
ポリカーボネート製なので、70度程度の熱湯にも十分に耐えれます。
また、ストラップはポリウレタン製のライクラ パイレンを使っています。
ライクラは非常に高品質なポリウレタン平ゴムで、高級スポーツウエア等に良く用いられる素材です。
そのライクラを包むように編んでいる糸はパイレン。
これは水着用の素材なので、非常に洗濯に強い素材です。
コンセプトは1年中毎日使うマスクなので、耐久性を重視して作りました。
何度か洗濯するとワカメのように成るゴムは使いません。
ストラップカラーは白と黒の2種類です。
頭に回すので黒の方が目立ち難いのですが、職場によっては色の指定が有るので清潔感の有る白もご用意しています。
耐久性を考え、マスク自体の縫い方にもこだわりました。
上下の端をキッチリと縫う事で、この部分からほどけてくる事を出来るだけ防げます。
また生地は基本的に水通ししているので、普通に洗濯しただけで大きく縮む事も有りません。
表地は主にはシャツに使われるコットン素材を用います。
通気性はガーゼ生地が勝りますが、耐久性に関してはシャツ用の生地が上回ります。
10回洗濯してもみすぼらしくは成りません。
裏地はコットン100%のソフトなWガーゼを2枚重ねにしています。
赤ちゃんの体拭きにも使う生地なので、肌触りはあくまでソフトです。
カラーは定番の白を中心に、デニム調やアースカラー等取り揃えています。
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